いぐり凧特徴を論文に 富山の長谷川さん

富山市星井町の医師長谷川眞常(まさつね)さん(87)=長谷川病院理事=は、出身地の島根県隠岐島に伝わる「いぐり凧(だこ)」の特徴である「ミミ」と呼ばれる突起が、凧の姿勢制御や滞空時間の引き延ばしに役立っているとする論文をまとめた。長谷川さんは病院関係者らでつくる「富山長谷川病院風神会」を率いて県内外の凧揚げ大会に参加しており、凧の歴史と魅力を伝えていく。
いぐり凧は、縁の上下左右に計10個の半円状の突起があり、それぞれ竹ひごで固定されている。長谷川さんによると、凧は軽いほうがよく揚がるといわれており、なぜいぐり凧には重量が増えるミミが付くのか、理由がはっきりしなかったという。

長谷川さんは2010年に、面積が約4・5畳分(縦約3メートル、横約2・5メートル)に達するいぐり凧を分解して持ち運びできるようにした「富山型いぐり凧」を開発し、その過程で竹ひごの組み合わせ方など、凧の構造に興味を持った。

各地の大会に出場するうち、いぐり凧が横風に強い傾向があることに気付き、あらためて骨組みを調べたところ、ミミが横風に合わせてたわみ、凧本体が風に向かって正面を向くようにする力がかかっていることが分かった。

論文では、ミミの竹ひごの重ね方によって、凧本体の上下方向に緩やかな傾きが作られ、風が弱くなった時に落ちにくく、滞空時間を延ばす動きが取りやすくなっているなど、ミミの特徴についての研究結果をまとめている。

論文は島根県隠岐の島町が編さんする、同町の文化財についての書籍に掲載してもらうため、同町教育委員会に送付した。長谷川さんは「先人が凧に施した工夫を知ることで、伝統の保護につながればうれしい」と話している。